アメリカ本土よりも日本からのほうが遥かに近い。古くから日本人にも馴染み深い、最も手軽なアメリカといえばグアムだ。この島でも濃ゆ~い乗りバスができるって知ってた?

文・写真:中山修一
(グアムの交通手段の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■常夏のユル〜い観光地

絵に描いたような南の島のビーチが広がる

 東京を起点に南へ2,500kmほど下った先に、マリアナ諸島の中で最も大きな島・グアムがある。長さ51km、幅15km、544平方キロメートルの面積を持ち、これは面積592.6平方キロメートルの淡路島と大体同じくらいの広さだ。

 日本〜グアムのアクセスには、羽田・成田・関空から直行便が出ている(福岡〜グアム線は2024年10月から運休)。アメリカ領ゆえパスポートは当然必須であるが、3時間強で行ける近さという点で、とりわけ簡単にアメリカを体験できる場所となっている。

アメリカのお国柄がよく出たスポーツもグアムなら体験可

 日本に最も近いアメリカの一つであるが、アメリカ本土からすれば東海岸(ニューヨークあたり)を起点にすると12,800km離れていて、なんと東海岸〜東京間の10,800kmよりも遠い。

 本土発でグアムへ行くにはハワイのホノルルを経由する必要があり、アメリカ的にグアムは超弩級に行き難い果ての果て、といったところか。

グアムの主要観光エリアの一つ・タモン

 田舎と言えばそうかも知れないが、グアムの主要産業である観光エリアのド真ん中でも、急がず慌てず時間がゆ〜っくり流れる、ローカルならではのメリットを享受できるのが魅力。

 観光客向けのミニスーパーに入って買い物をして袋も欲しいと言ったら、条例で出せなくなったからと代わりに段ボール箱くれたり、水1本買っただけで「これ食べる〜?」とバナナくれたり、タクシーに乗ったら運転手さんがデカいスナック菓子を袋ごとくれたり……そんな時々漂ってくるユル〜い空気感もまた愛おしい。

 ただし近年の円安も手伝って物価はそれなり。日本でおなじみの食べ物も売られているが、2024年秋の時点でカップ麺のラ王が驚愕の6ドル!!

 さらにMAXコーヒーが3ドル25、日本風居酒屋の何の変哲もないハイボールが1杯10ドルと、鼻血も出なくなるほどのゲンナマを要求してくるところはしっかりアメリカしている。

サッポロ一番の袋麺は1ドル20セントくらい。日本にはない「エビ味」がアツい

■グアムの公共交通事情ってどうなの?

 そんなグアムを観光で訪れて、現地での移動手段にはどんな種類が選べるのか。グアムの場合、滞在30日以内なら日本の運転免許証だけでクルマを運転して良いことになっているため、レンタカーを足にするのが第一の手段。

 とはいえ、いきなり左ハンドル右側通行は……なんて不安から、ずっと公共交通機関に頼りたいときだってあるハズ。そんな時、日本でならスグ相談に乗ってくれる電車はどうかと言えば、グアムに鉄道路線は1つもなく、本格的なクルマ社会だ。

 本名が「アントニオ B.ウォン・パット国際空港」なグアム空港と、観光客がよく利用するであろうエリア(タモン)のあたりまで約5km離れている。

空港へのアクセスは送迎サービスを活用すると楽

 歩くにはちょっと遠く、それなら空港〜観光エリアを結ぶ連絡バスの一つでも出ているかと思いきや、定期路線バスの類はなく、タクシーもしくは事前に送迎サービスを予約しておくのがお約束らしい。パックツアーで申し込めば大抵は空港送迎が含まれている。

グアムで特に有名なバスといえばこれ

 タモンのような観光客向けのエリアでは、観光用に特化したシャトルバスが何本か走っている。中でも赤と緑のツートンカラーに塗られた、路面電車風のデザインをした「赤いバス」が有名どころ。似たような配色の観光系循環バスが浅草にも走っているので、違いを比べてみると楽しいかも。

他人のソラ似? 浅草の循環バス「めぐりん」

 観光用シャトルバスは、各ホテル〜ショッピングモール等の大型商業施設とのアクセスを目的にした経路が組まれているものが多い。乗るには事前にチケットをオンラインで手配しておくか、パックツアーなら大抵はフリーパスが付いてくる。

多言語対応しているシャトルバスの停留所標識

 シャトルバスの種類によっては車内でチケットを購入できる場合もある。日本人観光客が割と多いグアムだけあって、観光用シャトルバスの乗り場には日本語併記のバス停標識が置かれていて、英語がぜんぜんダメでも要領は分かるハズ。

■路線バスも走ってます

 続いてシャトルバスに当てはまらない公共交通機関に注目してみると、観光客はあまり使う機会がないかも知れないが、実は一般路線バスと言える乗り物もちゃんとあって、8路線ほどが運行している。

 路線バスの運営事業者はGRTA(グアム地域輸送公社)。白地と波をイメージした青にボディを塗り分け、側面と後ろにGRTAと書かれている、トラックのような形をしたクルマが路線バスにあたる。

波模様と「GRTA」が目印、グアムの路線バス

 「ブルーライン」や「レッドライン」のように、路線(系統)を色分けで表しているのも特徴。運賃は1乗車1ドル50セント均一、1日乗車券が4ドルとのこと。

 観光用シャトルバスとは対照的に、路線バスのほうは地元民向けといった存在感を放ち、利用にあたっては多少の英語力が試される。

■日本にはないバスが!!

 バスが主体になっているグアムの公共交通機関。ここで車両に少し注目してみると、定員20〜30人くらいの、日本で言うマイクロバスくらいのサイズのクルマが、路線バスでも送迎バスでも、各運行事業者でまんべんなく使われている印象を持った。

 ピックアップトラックの後ろに客室を載せたようなスタイルで、言うなればボンネットバスだ。日本にはもうないスタイルのバス車両が、アメリカでは今も現役で活躍中とも取れる。

 車種を確認してみると、極めてポピュラーと見られるのがフォードE450(スーパーデューティー)だ。

フォードE450+スタークラフトMVPを使った送迎サービスのバス車両

 このクルマは運転席キャブから後ろを自由にアレンジできる構造で、バスやトラック、救急車、キャンピングカー等々、用途に応じて色々なタイプに化けるのが特徴。

 最近のモデルは7.3リッターV8ガソリンエンジンを搭載。ガソリン車のバスという点でも、日本のバス車両事情と照らし合わせると珍しく感じる。乗り心地は静かで悪くない。

 バス仕様のE450は、客室部分(上回り)を別のメーカーが手がけているものがあり、グアムで走行していた同タイプの車両では、スタークラフト・バス社が架装したモデル(MVPシリーズ)が目立った。

 常夏の島グアムでの移動にレンタカー以外の足を頼るなら、タクシーや送迎バス、ツアーバス、シャトルバス、語学力に不足ナシと思ったら路線バス、といったあたりから選べる。

 ただし、タクシーを除き島全体を網羅している公共交通機関はないため、どうしても限定的な移動手段に留まってしまうのはやむを得ないところか……。

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